【FAQ】:GAINプレート
タンパク質結晶化に活用できるGAIN法(固相ゲル結晶化法)とはどのようなものですか?
GAIN法は「Gel Advanced Improvement & Nucleation」の略称で、弊社で特許取得済みのゲル(固相)を用いた結晶化手法の一種です。
GAIN法の有効性について教えてください。
主要な効果は以下の2点で、卵白リゾチームやグルコースイソメラーゼなどのモデルタンパク質の他、複数のサンプルで効果が確認されており、結果として高精度なX線結晶構造解析が期待できます。
結晶の機械的強度の向上:タンパク質結晶作製後のクライオ操作やDMSOに溶解した薬剤のソーキングに対する耐性の向上が期待できます。1), 2)
核発生確率の向上:再現性の向上や結晶化スクリーニングのヒット確率の向上が期待できます。3)
1) Growth of Protein Crystals in Hydrogels Prevents Osmotic Shock; J. Am. Chem. Soc. 134 (2012) 5786-5789
2) Effect of Evaporation on Protein Crystals Grown in Semi-Solid Agarose Hydrogel; Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 025502
3) Promotion of Crystal Nucleation of Protein by Semi-Solid Agarose Gel; Appl. Phys. Express 2 (2009) 125501
GAIN法の有効性を引き出すためのポイントはありますか?
GAIN法において、「結晶の機械的強度の向上」の効果を得るためには、『ゲル中』で結晶を析出、成長させることがポイントとなります。
『ゲル中』で結晶析出、成長させるためには、最適なmesh sizeのゲルを選択する必要があります。最適なGel mesh sizeは、結晶化したいタンパク質の分子サイズ(会合体を形成すると考えられる場合は、会合状態の分子サイズ)や、結晶化溶液条件によって変わることがわかっています。
タンパク質の分子サイズが大きくなるほど、mesh sizeの大きなゲルを使用することで『ゲル中』で結晶を析出、成長させやすくなります。
同じタンパク質分子でも、結晶化溶液条件によっては、最適なmesh sizeが異なる場合があります。
ゲル中結晶が作製できるmesh sizeの範囲であれば、mesh sizeの小さなゲルを使用するほど、結晶の機械的強度が増し、ソーキング耐性の向上効果が高くなる傾向が見られます。
GAINプレートとは、どのようなものですか?
アズワン社製VIOLAMOプレート(VCP-1)の台形型のサブウェルにゲルを分注したものです。96ウェル全てにゲルを入れています。本プレートを正しく使用することにより、ソーキング耐性の高い結晶の作製や、核発生確率の向上効果が望めるよう開発しました。
結晶化したいタンパク質にカスタマイズできるよう、Gel mesh sizeが異なる4種類のプレートをご用意しております。
GAINプレートには、Gel mesh sizeの異なる4種類のプレートがあるようですが、どのように選択すれば良いですか?
GAINプレートに関する商品を表1に示します。目的のタンパク質サンプルにおいて、GAINプレートを初めてご使用になる場合は、まず、最適Gel mesh sizeを検討するための「Trial-kit」をご利用ください。本商品は、ゲルのmesh sizeが異なる4種類(S〜XL-size)のプレートがセットになっています。Gel mesh sizeは、S、M、L、XL-sizeの順に大きなサイズとなります。
「Trial-kit」による検討で、ゲル中結晶が作製可能なGel mesh sizeが明らかになった場合、最適プレートのみを個別でご購入いただけます。なお、複数のプレートでゲル中結晶が作製可能な場合は、よりmesh sizeの小さなプレートのご使用をお勧めします。
表1 GAINプレート商品一覧
品名
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商品コード
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備考
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Trial-kit
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GP-K01
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最適ゲル検討用プレート
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S-plate
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GP-S03
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Trial-kitにて、最適なGel mesh sizeをご確認後、最適なプレートを個別にご購入いただけます
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M-plate
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GP-M03
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L-plate
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GP-L03
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XL-plate
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GP-X03
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どのように使用すれば良いですか?
ゲル上で、シッティングドロップ蒸気拡散法を行う要領で結晶化実験が行えます。
結晶化手順
1)
GAINプレートを結晶化温度下で30分程度保管します。
2)
プレートシールを剥がし、リザーバー溶液を所要量入れます。
3)
ピペットチップの先端ができるだけゲルに触れないよう、Subwell-2のゲル上部に、タンパク質溶液、リザーバー溶液を添加し、プレートシールを貼り、密閉します。混合時のピペッティングを行う場合、ゲルが剥がれないよう、緩やかにお願いします。
4)
密閉後、結晶化温度にてインキュベートしてください。
ゲルは非常に乾燥しやすいため、シール剥離後は5分以内に結晶化実験を完了されることをお勧めします。5分以上、開放状態になる場合は、ゲルの乾燥を防ぐための簡易シールを貼るなどの対策をお願いします。
GAINプレートの消費期限、保管方法について教えてください。
ゲルは非常に乾燥しやすいため、お客様の実験スケジュールに合わせた受注生産で対応しております。製造後、冷蔵宅配便にてお客様の元に、翌日にお届けします。(お届け先によっては翌々日になる場合もあります。下記※を参照して下さい)到着しましたら、外箱(発泡箱)から出さずに、冷蔵環境下(4℃付近)で保管いただき、1週間以内に結晶化実験を開始いただくことをお勧めしております。期限を超えて保管されたものをご使用いただいた場合、ゲル中に結晶が析出しづらくなり、結晶強度、ソーキング耐性に対する効果が低下する可能性があります。
※翌々日着地域(茨城、栃木、山形、福島、宮城、岩手、秋田、青森)
(上記地域のお客様で、翌日にお届けを希望される場合、クロネコヤマトのクール宅急便にて発送いたします。その場合、送料はお客様ご負担となります。)
急激な温度変化は、ゲル上面の結露を促進し、ゲルの乾燥につながる恐れがあるため、特に冷蔵庫内の送風口近くなど、冷気の直接あたる場所での保管はできるだけ避けて下さい。
自動結晶化ロボットを用いた結晶化実験も可能ですか?
予め分注時のピペット位置の微調整などが必要ですが、使用可能です。調整方法については
弊社までお問い合わせください。
使用可能な結晶化温度は何度ですか?
一般的にタンパク質の結晶化に用いられる4〜20℃の結晶化温度において使用可能です。
プレート観察時の注意点について教えてください。
GAINプレートでの結晶化の場合、結晶核の発生位置が、ゲル界面付近、ゲル中など、様々な場合があります。顕微鏡の焦点の高さを通常より大きく振って観察されることをお勧めします。
使用できる溶液条件に制限はありますか?
結晶化溶液に、「一部の塩類」や「有機溶媒類」が高濃度に含まれる場合、ゲルが硬化することがあります。
得られた結晶の取り出し方を教えてください。
ゲルに包まれた状態の結晶を取り出す場合、汎用されている結晶マウント用のナイロンループで直接取り出すことが難しいことがあります。その場合は、弊社商品である
マイクロナイフ(MK-100〜300、500)やゲルキャリー(GC-600、050、080)、
ゲルキャッチャー(GT-500)のご使用をお勧めします。
GAINプレートの廃棄方法について教えてください。
当プレートに分注しているゲルには、危険物、劇物等は使用しておりません。通常の結晶化プレートと同様の方法で廃棄いただけます。